1.未利用資源からのレアメタルの選択的回収プロセス
我が国はレアメタル資源に乏しいことから、現代のハイテク産業を維持または促進するためには、
海外のレアメタル資源に依らない新たなレアメタル資源を確立することが必須である。
また、未利用資源から我が国独自のレアメタル資源を回収する技術を保有しておくことは
「資源安全保障」の観点からも重要である。当研究室では、海水や温泉水、かん水などの未利用資源に着目し、
これらからのレアメタルを中心とした有価資源(リチウムやホウ素など)の分離回収プロセスについてについて、
吸着分離法を中心として研究を進めている。
参考資料:海水からの実用的リチウム回収技術
近年、廃電化製品を中心としたレアメタルを含有する廃棄物は「都市鉱山」と呼ばれ、
新たなレアメタル資源として注目されている。
当研究室では、廃自動車触媒や廃リチウムイオン電池からの
レアメタル資源(貴金属類、希土類金属、リチウムやコバルトなど)の分離回収プロセスについて、
イオン交換法や溶媒抽出法を駆使して研究を進めている。
工場廃水中には、処理を必要とする有害物質が含有されていることが多い。
近年では、環境規制も強化されていることから、工場の排出口以前において、有害物質を除去する
「エンド・オブ・パイプ技術」が要求されている。
加えて、地下水や環境水中にも有害物質が含有されている場合が多く、これらの除去技術も必須である。
当研究室では、吸着分離法や膜分離法を駆使して、工場廃水中の 有機系有害物質(有機アミン類など)や
環境水中の無機系有害物質(ヒ素やホウ素など)の除去プロセスについて研究を進めている。
近年、マイクロメートルオーダーの流路を有した数センチメートル角のチップを分析の反応場として利用する、マイクロ総分析システムが
注目を集めている。当研究室では、液系での流れ分析の一つであるフローインジェクション分析法(FIA)をマイクロチップ上において実現し、
小型で低廉かつ高選択的な分析システムの開発を進めている。
参考資料:マイクロフローインジェクション分析法による尿分析システム(英語)
従来、高性能な新規分離剤の開発には、大規模なスクリーニング作業など膨大な実験開発期間が必要であった。
当研究室では、分離剤の分子設計や分離メカニズムの本質的理解を目的とし、
分子力学法(MM)、分子軌道法(MO)、分子動力学法(MD)を駆使して、
抽出系の金属錯体の熱力学パラメータと抽出に伴う内部エネルギーとの定量的構造特性相関(QSPR)や、
有機相−水相界面近傍の局所構造と金属錯体の抽出過程のQSPRについて研究を進めている。
参考資料:抽出分離と計算機化学